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2012/02/22
SMMAクロストーク「地底の森動物園・開園!-動物園の人がみた昔の動物たち-」レポート
2011年8月6日、27日、地底の森ミュージアムでSMMAクロストークが行われました。
クロストークとは、専門分野の異なる学芸員が何人か集まり、一つのテーマについて語り合う企画。ジャンルの異なるプロの目を通して、さまざまな角度からミュージアムをより楽しもうというものです。
今回は、地底の森ミュージアムで開催中の特別企画展「動物の考古学」を舞台に、佐藤祐輔(ゆうすけ)学芸員(考古学)と阿部敏計(としかず)学芸員(動物飼育)のお二人が約1時間お話しされました。トークが始まるころには、親子連れや学生、旅行中のご夫婦など、たくさんのお客様にお集まりいただきました。
「動物の考古学」展では、動物をかたどった土製品121点が東北・関東各地から集められ、剥製(はくせい)と比較展示されています。中には、何の動物を表したのかわからないものもあり、見る人の想像力がかきたてられます。
佐藤さんが展示内容を解説(トーク)しながら、動物にくわしい阿部さんに「これは何の動物にみえるのでしょうか?」と問いかけます。そこから参加者もまじえて、あれこれみんなで考えていくという流れとなりました。
1 イノシシとクマ
縄文・弥生時代の人びとが最も多く作ったのが、イノシシの形をした土製品なのだそうです。弥生時代以降は、クマと考えられる土製品も多く見られます。ニホンイノシシやツキノワグマのはく製と見比べながら、「イノシシは背中にたてがみがある。丈夫で病気しない」「クマは体を起こし、腰掛けることができる」「クマの頭は逆三角形」といった阿部さんの指摘を参考に、参加者の皆さんは「これはイノシシ?クマ?」と、土製品を一つ一つ観察していきました。
2 何の動物?
なかには、何の動物をかたどったのかわからない土製品もたくさんあります。それらの多くは、手のひらにのるくらいの小さなもの。用途はわかっていません。会場には、展示品がなんの動物に見えるかアンケート投票用紙があり、こどもたちがいっしょうけんめい記入していました。
3 これって、カメ? アザラシ?水鳥?
3つ目のコーナーは、中が空洞になっている中空土製品。大小さまざまなサイズの中空土製品は、いずれもヒレのような足が4本と頭がついており、まんなかに穴があいています。なんとも不思議なかたちで、見たところカメのように見えます。他にも、アザラシが泳ぐ姿や、水鳥がはばたく姿という説もあるのだとか。トークの間たくさんの土製品を見てきた参加者も、首をひねるばかり。
そこで、八木山動物公園からスペシャルゲストが登場!ミシシッピアカミミガメです。展示された中空土製品と本物のカメを見比べてみよう、という試み。こどもたちは手でカメにふれながら、阿部さんと一緒に「足のつき方が違う」などじっくり観察。本物と見比べると、中空土製品はどうもカメではないらしい、という意見にまとまりました。阿部さん、アザラシが泳ぐ姿を思わせるとのこと。
こどもたちをはじめ、参加したお客様と学芸員とのやりとりをまじえながらのツアー、終始なごやかな雰囲気でした。お二人が写真資料やカメなどを用意して、1時間という子どもたちには長い時間にもかかわらず、熱心にお話を聞いてました。
参加者の感想文から一部抜粋:みんなで意見をかわしながら、学芸員のトークを楽しんだ様子がうかがわれます。
「いろいろな土器を見られて良かったです」
「もっといろんなものを見てみたいです」
「難しかったけれど面白かった。またぜったい行きたい」
「一方的なお話しでなく、子どもたちの意見をきいたりして楽しかった」
「みんなで意見を言い合う方法がとてもよかった」
「非常にたくさんの土製品が集められており、新しい
解釈をきくことができてよかった」
「幅広い年齢層に対応したトークで、とても面白かった」
地底の森ミュージアム開館15周年記念 平成23年度特別企画展「動物の考古学」関連企画 SMMAクロストーク「地底の森動物園・開園!-動物園の人がみた昔の動物たち-」 ■日時:2011(平成23)年8月6日(土)、27日(土) 各日11:00~12:00 ※両日とも同じ内容で実施。 ■会場:地底の森ミュージアム 企画展示室 ■お話し:佐藤祐輔学芸員(「動物の考古学」展企画者:地底の森ミュージアム学芸員) 阿部敏計学芸員(仙台市八木山動物公園 飼育展示課長) ■参加者数:①8月6日 35名(大人27、子ども8) ②8月27日 24名(大人19、子ども5) |
報告:松葉里江子(仙台・宮城ミュージアムアライアンス事務局)