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企画展「鉄道のためにはたらく乗りもの」レポート

キドウケンソクシャ? ケンチクゲンカイソクテイヨウシケンシャ? マルチプルタイタンパー? レールサクセイシャ? トウハイセツホシュヨウシャ?

今回は、普段なかなか目にすることのない乗りものたちとたくさん出会える東北福祉大学・鉄道交流ステーション企画展「鉄道のためにはたらく乗りもの」(2018年8月1日(水)〜11月2日(金))の様子をレポートします。

 

中に入ると「鉄路のお医者さん」「鉄路を守る 」「雪と戦う」「電車のけん引役」「鉄路のレスキュー隊」のテーマごとに乗りもの写真や模型が所狭しと展示されていました。そのほんの一部をご紹介します。

「鉄路のお医者さん」
主な乗りもの:軌道検測車、架線試験車、電気検測車、電気・軌道総合検測車、建築限界測定用試験車、など。
こちらでは、線路や架線などの鉄道設備を常に良好な状態に維持し、列車を安全に走行させるためにはたらく乗りものを紹介しています。
 

【軌道検測車】当初は、人力を頼りに素朴な方法で行われていた保守作業でしたが、より正確に測るために、列車が線路の上を走行している状態でレールの間隔や歪みなどを調べる軌道検測車が開発されました。保守作業の方法も、必要に応じて行う随時修繕方式かから、事故を未然に防ぐために計画的に行う定期修繕方式へ移り変わるなど、私たちの安全を守るために日々進歩しています。


【電気・軌道総合検測車】新幹線の開業に伴い、高速で走行しながら線路を検査する電気・軌道総合検測車が開発されました。”総合”とつくのは、線路だけでなく、信号・通信系統の検測も可能となったからです。黄色い車体に青いラインの「ドクターイエロー」(上)が有名ですが、JR東日本では白地に赤いラインが入った「East i」(中)が鉄路の安全を守っています。


【建築限界測定用試験車】新線の開通など線路周辺の建造物に大きな変化が生じた場合、その線路を走る車両が駅舎やトンネルなどの構造物に触れることなく、安全に走行できることを確認するために開発されました。現在は、光学式センサーで確認していますが、以前は写真のオヤ31系のように、車両の側面から放射状に広がった矢羽根が、はみだした建造物に触れると倒れて信号を送るという仕組みでした。オヤ31系は、低速でしずしずと走行し、矢羽根がかんざしの様に見えたことから「オイラン車」愛称で呼ばれていました。

 

「鉄路を守る」
■主な乗りもの:マルチプルタイタンパー、バラストクリーナー、長尺レール輸送車、レール削正車、など。
こちらでは、レールの交換や、道床の付き固め、架線工事など、かつては人力に頼っていた危険を伴う重労働を、安全かつ効率的に行うためにはたらく乗りものを紹介しています。戦後、保線の仕事を近代化するために東京の田端に機械軌道区が設けられ、大型の輸入機械が導入されました。その頃の貴重な機械群の写真も展示されています。


【マルチプルタイタンパー】レールを持ち上げて隙間を作り、爪で枕木の下の道床のつき固めたり、道床を入れてレールの高さを調整したり、レールの曲がりを修正したりと、これまでたくさんの人手と時間を要していた保守作業を一度に行うことができる乗りもので、通称「マルタイ」と呼ばれます。機械作業が導入された当初は、輸入した高価なスイス・マチサ社製のマルタイが活躍していました。

 

「雪と戦う」
■主な乗りもの:くさび型雪かき車(ラッセル車)、回転雪かき車(ロータリー車)、広幅雪かき車(ジョルダン車)、かき寄せ雪かき車(マックレー車)、排雪モーターカー、など。
鉄道保線の作業の中でも厳しいとされる降雪対策。こちらでは、線路に積もった雪を除雪する乗りものを紹介しています。

 


【ラッセル車とロータリー車】かつて雪と戦っていたラッセル車は、前頭部がくさび形の鋤になっていて、単線では、中心から雪を左右に切り分けるように進みつつ、雪を後方へはね飛ばしていました。しかし、あまりに雪が深いと、切り分けた雪が崩れてきてしまうので、そんな時はロータリー車の出番です。前頭部にある風車のような羽根車を回転させて雪を削り込み、遠心力で側方に投げ飛ばすのです。現在では、除雪用のアタッチメントをつけた軌道モーターカーでの作業が主流で、JR東日本では、ラッセル車とロータリー車の機能を同時に備えた大型の投排雪保守用車ENR-1000通称「ビッグロモ」が豪雪地域の雪と戦っています。

 

「電車のけん引役」
■主な乗りもの:事業用けん引車、入換車、スイッチャー、など。
こちらでは、自走できない電車を回送したり、車両基地などで電車の入れ替えをする際にはたらく乗りものを紹介しています。

 
【スイッチャーとアント】車両センターや車両工場では、入れ替え専用の入換軌道(スイッチャー)「アント」呼ばれる小型の鉄道用車両移動機がたくさん働いています。企画展のチラシで新幹線を力強く引っ張っているのもスイッチャーです。

 

「鉄路のレスキュー隊」
■主な乗りもの:救援車、操重車、軌道自転車など。
こちらでは、災害や脱線事故が起きたときに、現場に駆けつけ乗客の救援や復旧作業を行う乗りものを紹介しています。


▲【救援車・操重車】道路網が発達する以前は、資材や作業員を乗せた救援車や、クレーンを搭載した操重車で編成を組んで現場に駆けつけ、救援や復旧作業にあたっていました。現在は、道路網が発達しトラックや自動車、軌陸タイプのレスキュー車が現場で活躍しており、救援車は廃車が進んでいます。かつて事故救援や大型工事で活躍した操重車も既に現場からは姿を消しました。

 

〜映像コーナー〜


▲マルタイやレール削正車、投排雪保守用車「ビックロモ」などが実際に働いている姿を見ることができます。

珍しい乗りものの模型も魅力的ですが、実は展示している写真も貴重な物ばかりです。学芸員の鈴木さんに教えていただいて初めて気がついたのですが、写っている鉄道のためにはたらく乗りものたちは、いつ・どこを走るのか一般的には知らされていないものばかり。しかも、その大半は鉄道が運行していない時間帯、線路を走っています。そんなお目にかかれただけで奇跡的な乗りものたちを、一体どのようにして美しく、かっこよく写真に収めることが出来たのか…。考えれば考えるほど、高い技術と、それを支える深い鉄道への情熱がうかがえてきます。


▲建築限界測定用試験車(マヤ50)の光学式センサーが光った一瞬を見事に収めた写真など、鉄道の奥深さを感じさせてくれる写真は必見です。

今回の企画展を通して、鉄道の安全で正確な運行を支えるために働く乗りものや、乗りものを動かす人の存在と初めて向き合ったような気がします。もはや当たり前の様に思っている鉄道の定時運行ですが、それを支えるために深夜や早朝にかけて繰り広げられる舞台裏の世界のことを思うと、ありがたさが身にしみてきます。これから深夜の線路や車両基地に思わず目が行ってしまいそうになることと合わせて、世界観が広がる企画展でした。11月2日(金)まで開催していますので、ぜひ足をお運びください!

(事務局・帖地)

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【お問い合わせ】
東北福祉大学・鉄道交流ステーション
TEL: 022-728-6612

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