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2020/03/25
ミュージアムトークテラス 第4回 「古代ローマの宴(うたげ)」レポート
学芸員など、ミュージアムで働く「中の人」の魅力的なお話をお伝えするトークプログラム「ミュージアムトークテラス」。美味しい料理や飲み物と一緒に、専門家のお話を気軽な雰囲気の中で楽しむことができるのが特徴です。
2020年2月28日に開催した第4回では、東北大学総合学術博物館・小川知幸助教に推薦いただいた東北大学附属図書館の遠藤直子さんと、東北大学大学院文学研究科 博士後期課程の武関彩瑛さんを講師にお迎えして、「古代ローマの宴」というテーマでお話いただきました。
▲イベントの冒頭、小川先生による太鼓の音色と共に花道に見立てたスロープから”古代ローマ風”な装いで登場した講師のお二人! 色鮮やかな衣装と装飾に会場が一気に異国の雰囲気に包まれました。ちなみに、お二人からの提案で、この日は小川先生をはじめSMMA事務局のスタッフも”古代ローマ風”な装いでイベントに臨みました。
▲まずは西洋美術史がご専門の武関さんに、古代ローマでは宴がどのようにして催されていたのか、宴の会場として使用されていた部屋の写真等を用いながら紹介していただきました。なんと古代ローマの人々は、 ”トリクリニウム”と呼ばれる当時の宴会用の部屋に、”クリネ”と呼ばれる寝椅子を使って寝っ転がりながら宴を楽しんでいたとのこと! 3つの寝椅子が”コの字”状に置かれ、その中央に食べ物やお酒が置かれるスタイルが多かったようです。寝っ転がりながら、食べて、呑んで…なんて楽しそうな宴でしょう! 実はこの日の会場も、お二人のご提案でコの字型に設置してありました。
▲話は宴会そのものだけではなく、宴会用の部屋の装飾にまで広がりました。ウニやエビの殻、魚の骨やイチジク、そしてさらにそれを狙うネズミまでもが描かれているユニークな床モザイクもあったそうです。当時の宴会では、食事をした後の殻などをそのまま床に投げ捨ててしまっていたので、このように本物そっくりに表わされた床モザイクは、現実の食べ物と描かれた食べ物がわからなくなってしまう、遊び心満載のしつらえだったそうです。一方で、骸骨が寝そべっている恐ろしげな床モザイクも紹介されました。しかし、この骸骨というモチーフには「人はいつか必ず死んでしまうことを忘れるな。だからこそ今を大いに楽しもう!」という宴会の場にふさわしいメッセージが込められていたそうです。このメッセージは、武関さんからミュージアムトークテラスを楽しむ会場の皆さんに送られたメッセージでもありました。
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▲次にお話いただいた遠藤さんのご専門は西洋史。その饗宴的な人生を、エリザベス・テイラーやヴィヴィアン・リー、モニカ・ベルッチ、香椎由宇から菜々緒まで名だたる美女達により演じられてきたクレオパトラが、実際はどのような人物だったのか、残されている資料をもとにお話いただきました。クレオパトラはプトレマイオス朝最後の女王として歴史に与えた影響力から、古代ローマ史の文脈の中で語られることが多い存在だそうです。また、現在に残された古い資料のほとんどは、敵対していたローマ帝国側のクレオパトラと直接接点の無い人物が記したものが多く、実際のクレオパトラがどのような人物だったのか、未だによく分かっていないとのこと。例えば、褐色の肌に黒髪の印象が強いクレオパトラですが、実際は白い肌に金髪だった可能性もあるようで、クレオパトラのお墓が見つかれば、その真実が分かるかもしれない、という歴史浪漫あふれるエピソードをご紹介いただきました。
▲では、現代の私たちが抱くクレオパトラのイメージを作ったのは誰なのかというと、それは16世紀イギリスのシェイクスピアが記した『アントニーとクレオパトラ』による影響が大きいそうです。シェイクスピアは、様々な旅行記や見聞録、歴史家ヘロドトスの記述などから、エジプトに対して、キリスト教社会とは全く異なる価値観を持った不思議な国というイメージを抱き、不思議な国エジプトの住人であり、ローマの敵、異教徒といったキーワードから、クレオパトラのイメージを作りあげたようです。また、そのような書籍が翻訳されることで、どのようにして日本にクレオパトラの存在が伝わってきたかなど、クレオパトラに関する興味深いお話をたくさん聞くことが出来ました。お話の最後に、クレオパトラに興味を持った方に遠藤さんがオススメする東北大学附属図書館や仙台市図書館で借りられる書籍をご紹介いただきましたので、ご興味のある方はぜひご覧ください!
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▲マニアックなテーマでしたが、分かりやすく楽しくお話いただいたおかげで、古代ローマの魅力にどっぷり浸ることができました。素敵なお話と衣装で大いに会場を盛り上げてくださった遠藤さん、武関さん、そして素敵なお二人をご紹介いただいた小川先生、ありがとうございました! 遠藤さんと武関さんにはアレクサンドロス大王や古代の薔薇のお話など、何やらまだまだお話いただけるネタがたくさんありそうなご様子。お越しいただいた方からも「続きが聞きたい!」というお声をたくさんいただきました。魅力的な3人が日々活躍する東北大学総合学術博物館や、東北大学附属図書館、東北大学の今後の動向にもぜひご注目ください!
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▲今回も会場を提供していただいたクレプスキュールカフェのみなさま。美味しい料理や飲み物でトークに花を添えていただきありがとうございました! 古代ローマのお話に耳を傾けながら飲むワインはとても美味しそうでした…! クレプスキュールカフェは、せんだいメディアテークの1階にありますので、こちらにもぜひお立ち寄りください!
(事務局・帖地)
**これまでに開催したミュージアムトークテラスの情報はこちら**
・第1回「女性ファッション雑誌の変遷・歴史」(2019年6月21日開催)
・第2回「セントラル劇場から考えた「記録」と「場所」」(2019年10月11日開催)
・第3回「水族館今昔物語〜水槽の向こう側〜」(2019年12月13日開催)