SMMA SENDAI MIYAGI MUSEUM ALLIANCE 仙台・宮城ミュージアムアライアンス

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SMMAミュージアムユニバースが開催されました。

去る2012年10月20日(土)および21日(日)の2日にわたって、SMMAミュージアムユニバースが開催されました。
このイベントは、SMMAが目指している、参加館それぞれの活動を束ねて増強させること、そして、参加館それぞれが持っている知的文化資源を総合的に把握できる場を作ることの実践の一つとして、今年はじめて行われるものです。

イベントでは、キーワードを糸口に特別展の見所や日頃の研究成果を語りつないでいく「リレートーク」、そして、ものづくりやあそびを通して各館の特色を味わうことができる「体験コーナー」が、せんだいメディアテーク1階のオープンスクエアを会場に繰り広げられました。また会場内には、参加館の紹介やイベント案内等を集めた情報コーナーを設置し、第57回文化財展の出張展示(仙台市文化財課主催)も行われました。

2日間とも、たくさんの市民の方が足を運んで下さり、会場は大いに賑わいました。お越しいただいたみなさま、誠にありがとうございました!

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▲ 会場風景(21日)

[10月20日リレートーク/キーワード:旅]
「安野光雅『旅の絵本』をめぐって」 市川市芳澤ガーデンギャラリー 学芸員 森 綾子/仙台文学館 学芸員 渡部 直子

開催中の特別展「井上ひさしと安野光雅~文学と絵画の出会い」を題材に、安野光雅の「旅の絵本」の魅力が、安野氏をよく知る森綾子さんをお招きし、余すことなく語られました。「旅の絵本」には、絵そのものの魅力も去ることながら、たくさんの情報と遊び心が隠されています。トークは「ほら、ここにこんな動物がいますよ」などと、絵本の隠れた見所について、画像を示しながら進んでいきました。おふたりとも「旅の絵本」のお話しをすることが楽しくてたまらない様子で、60分では語り尽くせないようでした。

「風景画家の歩み~東山魁夷と旅~」 宮城県美術館 学芸員 宮坂 敦子
開催中の特別展「東山魁夷展」の見所や作品にまつわるエピソードについて、作品画像を示しながら解説。宮坂さんの終始柔らかな語り口に会場は惹きつけられました。魁夷は旅を重ね、スケッチすることを大切にしましたが、作品として描く風景は見たままの姿ではなく、作者によって実際の風景から抽出され、更に象徴化された姿であるとのこと。また、旅の中で心をリフレッシュさせることが新たな感動を生み、次なる創作に繋がったとも。東山魁夷という画家は、いかに旅と関係が深く、旅を大切にしていたかということが実感できるトークでした。

「江戸の道中事情~名所・名物・旅案内~」 仙台市博物館 学芸員 坂田 美咲
開催中の特別展「江戸の旅 たどる道、えがかれる風景」より、展示品をスライドで示しながらお話しいただきました。絵図や旅道具などの話題からは、旅人で賑わう宿や宿場町、そして街道の様子が生き生きと伝えられました。各地の名所・旧跡や名物などを紹介する当時のガイドブックからは、現代の私たちとさほど変わらない人々の好奇心が伺えました。坂田さん選りすぐりの見逃せない展示品が次々と紹介され、会場は釘付けに。江戸の旅について、様々な観点から知識を深めることができた60分でした。

「旅する古代人~生きるための「旅」~」 地底の森ミュージアム 学芸員 佐藤 祐輔
古代人にとって、生活すること自体が「旅」だった・・・。数少ない遺跡や遺物を基に古代の生活を究明する難しさと楽しさが語られました。特に圧巻は実際に石器を削り出す実演。会場に石の塊と鹿の骨を持ち込み、古代人そのままに石の割り出しをする佐藤さんを、会場はかたずをのんで見守りました。石器加工に適した石を無駄なく使い切るためには「きちんと決められた工程と確かな技術」が必要とのこと。「もしタイムマシンがあったら旧石器時代に行って石器作りの手ほどきを受けたいくらいです」という佐藤さんの締めの一言に、聞いていた私たちも深くうなずきました。

[10月21日リレートーク/キーワード:伝える]
「どうぶつことば、おしえます。~鳴き声の秘密に迫る?!~」 仙台市八木山動物公園 獣医師 釜谷 大輔/同 飼育員 高橋 信也

動物公園の人気者の意外な声、滅多に発しない声など、録音された珍しい動物たちの声を聞きながらのトーク。飼育員にしか見せない行動や声があることなど、普段中々聞けない動物公園での動物たちの生活について教えていただきました。どれも、動物に身近に接している彼らにしか語れないとてもおもしろい内容でした。また、声の正体を会場に問うクイズもあり、正解者には釜谷さん特製のプレゼントが。会場は和やかな雰囲気となりました。

「オルテリウスの海獣~ヨーロッパの世界地図の歴史~」 東北大学総合学術博物館 助教 小川 知幸
16世紀にアブラハム・オルテリウスによって作られた、近代地図帳の先駆け『世界の舞台』を中心に、豊富な図例を用いて小川さんの研究成果が披露されました。不思議な海獣が描かれた地図や未知の国の奇妙な怪物の絵、そして現代の地図と比較しても遜色ない世界地図などが次から次へと映し出され、会場からは感心の声しきり。ヨーロッパに始まる近代地図帳成立の歴史と、そこから伺い知ることができる当時の人々の世界観や未知なる世界への憧れ、そして畏れについてたっぷりとお話を伺いました。

「仙台を伝える~タイポグラファーってどんな仕事!?~」 タイポグラファー 小泉 均/せんだいメディアテーク 主任学芸員 清水 有
タイポグラファーの小泉均さんを迎え、活版印刷の歴史と魅力についてお話しを伺いました。ヨーロッパで生まれた活版印刷が情報の伝達に大きな役目を果たしただけでなく、デザイン方面に及ぼした影響について、とても興味深いお話しが次々と語られました。またせんだいメディアテーク所蔵の活版印刷機Adanaを使っての活版印刷作業の実演もあり、精巧な機械としての魅力も再確認。普段何気なく目にしている文字について改めて考える機会となりました。

「星がおしえてくれること~天体の色と情報~」仙台市天文台 台長 土佐 誠
土佐台長がかっこいい赤のジャンプスーツ(仙台市天文台のユニフォームなのです)で登場。古代から現代まで時空を超えた「星と人との関わり」を、わかりやすい言葉とたくさんの画像で解説。星からの情報である光を読み解く鍵・スペクトルによって、星の正体を解明する面白さに引き込まれました。また、星は一生を終えるときに大爆発をして新たな元素をばらまき、それらによって私たちの体がつくられているとのこと。つまり、私たちは「星のかけら」なのだそうです。晩秋の澄んだ夜空をじっくり眺めたくなる印象深いお話でした。

[体験コーナー]
「合羽刷りのしおりを作ろう」 東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館(20・21日)

通常、展示に合わせて芹沢銈介美術工芸館で開かれる人気のワークショップが登場。芹沢銈介のお弟子さんがデザインした型を使って、草花などの文様を好みの色で染めます。子どもたちも次々と素敵なしおりを仕上げました。世代を問わず特に女性に好評のようです。

「昔なつかし・手作りおもちゃで遊ぼう」 仙台市歴史民俗資料館(20・21日)
ブンブンごま、けんだま、ちゃかぽこ、がりがりとんぼなど、なつかしのおもちゃに思わず手を伸ばし、上手に操るお父さん、お母さん。それを見ていた子どもたちも慣れない手つきで遊び始め、いつしか夢中になっている様子がみられました。

「ミニミニ縄文グッズをつくろう」 仙台市縄文の森広場(20日)
縄文時代の土偶や土器などを模した型を使って、粘土でミニミニグッズをつくる体験。縄文の森広場で試作を重ねてきたグッズで、参加者の反応が気になるところです。意外と大人の参加者が多く、じっくりと凝った模様を描いて仕上げていました。

「縄文のアクセサリー“管玉”をつくろう」 仙台市縄文の森広場(21日)
縄文の森広場で人気の縄文のアクセサリーをつくる体験。今回も参加者が多く、急きょ座席を増設したほどです。子どもも大人も一緒になって、黙々と滑石(かっせき)を磨くこと約15分、きれいな管玉が出来上がりました。

「チャレンジラボ」 仙台市科学館(21日)
ブンブンごま、ソーマトロープ、バランスとんぼ。不思議なおもちゃに、子どもたち(大人も)の目は釘付け。色を塗ったり紙を切ったりして作品を仕上げました。スタッフからおもちゃの仕組みを教えてもらい、科学のおもしろさを体感していたようです。

▲ 体験コーナーの様子(21日)

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SMMAの取組みは今年で4年目になりますが、12館が一堂に会するイベントを今回初めて実現することができました。12館それぞれに潜在する知的文化資源は無尽蔵であり、今回お伝えできたのはほんの一部に過ぎません。今後は、それらを更に掘り起こし、12館が力を合わせてより魅力的な取組みができるよう努めていきたいと思っております。みなさま、どうぞご期待ください。

仙台・宮城ミュージアムアライアンス事務局

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