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2019/09/02
特別企画展「センダイ 遺跡の記憶」&ミュージアムシアター「狩人登場!」レポート
今回は、地底の森ミュージアム(仙台市富沢遺跡保存館)で開催中の特別企画展「センダイ 遺跡の記憶」(2019年7月19日(金)〜9月23日(月・祝))の様子をご紹介します。
▲私たちが暮らす仙台では、これまでにおよそ800もの遺跡が確認されています。今回の特別展では、縄文時代から古墳時代にかけての仙台の様子を探るべく、「宮城県指定文化財」となっている野川遺跡、上ノ原遺跡の石器と土器、「仙台市指定文化財」となっている中在家南(なかざいけみなみ)遺跡、戸ノ内遺跡、春日社(かすがしゃ)古墳から出土した石器、土器、革盾などをご紹介しています。また、秋田県、岩手県、福島県、新潟県といった周辺地域の出土資料も展示されており、仙台の資料と見比べることで地域の歴史について考えることができました。
▲会場には300点以上の資料が並んでいましたが、中でも注目して欲しいポイントには床に足跡マークが! こちらのマークの場所に立つと、新潟県糸魚川市にある縄文時代の遺跡、長者ヶ原(ちょうじゃがはら)遺跡から出土した翡翠(ひすい)製品の一部を、拡大鏡のレンズ越しに見ることができました。レンズをのぞき込んで観察すると、翡翠にあけようとした穴の底の中央に、出っ張った部分が見えます。これは、翡翠に穴をあけた道具がパイプの様に中が空洞だったことを示しており、昔の人がどのような道具を使って翡翠に穴をあけていたのか窺い知ることができる貴重な資料です。ぜひ会場で実物を確かめてください。
▲特別展関連イベント「つくってみよう きみだけの宝もの」では、滑石(かっせき)という鉱物に実際に穴をあけることで、昔の人がどんな道具を使って穴をあけていたのか、展示資料と見比べながら体験することができます。次回は2019年9月15日(日)に開催しますので、興味のある方はぜひご参加ください!
▲仙台市若林区にある弥生時代の遺跡、中在家南遺跡から出土した石包丁が展示されていました。石包丁とは、コメを収穫する際に稲の穂を摘み取る道具ですが、こちらの資料をよく見てみると刃の周辺に独特の光沢があるのが分かります。足跡マークに立つと、光沢が見えやすくなりますよ。これは使い込まれた石包丁に見られる「コーングロス」で、たくさんの稲を刈り取った結果、石の表面が摩耗して光って見えるそうです。コメ作りに精を出す昔の仙台の人々が目に浮かびます! こちらも実物の方がよく分かるので、ぜひ御自身の目でお確かめください。
▲翡翠と同じように石包丁にも穴があけられていますが、資料を見ると苦労しながら石に穴をあけていた様子が窺えてきます。写真の一番上の段にある完成まで至らなかった「穿孔(せんこう)段階」の石包丁を見てみると、ちょうど穴をあけようとしている部分から、ポキッと真っ二つに割れてしまったことが分かります。おそらく縁日のカタヌキに挑戦したことがある方はこの悔しさが分かるはず! 当時作業をしていた人もかなり悔しかっただろうと思うと、弥生時代の人にとても親近感が湧いてくる資料でした。
▲こちらは、仙台市太白区にある古墳時代の遺跡、春日社古墳から出土した革盾です。残念ながら革や木枠の部分は残っていませんでしたが、革に塗布された黒い色の漆と、赤い色の顔料が残っていたため、盾の全体の形や模様が分かるという希少な例です。
ギャラリートークでは、特別に革盾を周囲の土ごと取り上げて丁寧に保存処理する様子の映像が紹介され、漆や顔料がはがれないように時間をかけて慎重に処理したり、専門機関に委ねるため京都へ輸送したりと時間と労力をかけて保存されていることが分かりました。
復元した盾が展示ケースの奥に飾られていますが、この様に大型で鮮やかな革製の盾は副葬品として発見されるものが多く、中央のヤマト政権から地方の有力者に配られた可能性があることから、中央と仙台のつながりを示す貴重な資料でもあります。
会場には、他にも多くの土器や石器が展示されており、昔の仙台の人々が作ったり、使ったりした資料を通して、地域の歴史に思いを馳せることができる興味深い展示でした。
▲今回の特別展では展示の合間に素敵なイラストが飾られており、来場者の目を楽しませていました。こちらは細野修一さんが、富沢遺跡をテーマにした絵本『跡 ato 大地の思い出』のために描いたイラストの原画です。細野さんは仙台市富沢遺跡の復元画を手がけており、旧石器時代(氷河期)の自然環境と狩人たちを描いています。会場に行かれた際は、美しいだけでなく遺跡の記憶を描き出した細野さんのイラストにもぜひご注目下さい。
※絵本『跡 at0 大地の思い出』は、地底の森ミュージアムでお買い求めいただけます。詳しくはコチラをご覧ください。
〜ミュージアムシアター「狩人登場!」〜
▲取材に訪れた日は、ちょうど旧石器時代の”狩人”が出現していました! 毛皮の上で石器を作ったり、チョウセンゴヨウから種子を取り出して食べたり、思い思いに過ごしているようでした。”狩人”の様子を見ていると、約2万年前に地底の森ミュージアムがあった場所で生活していたであろう人々の様子を窺い知ることができます。見た目はちょっと怖いかもしれませんが、話しかけてみると気さくに接してくれる”狩人”たち。現代に生きる私たちには全く分からない言葉を操っているので、運良く出会えた方はぜひ身振り手振りを駆使してコミュニケーションを楽しんでください!
▲毛皮を身につけた”狩人”が、何かするようなので地下展示室へ移動しました。地底の森ミュージアムの地下展示室には、約2万年前のたき火の跡や、森の跡がそのまま保存・展示されており、ここでしか見ることのできない貴重な景色が広がっています。また、発掘調査の成果から2万年前の富沢のできごとを復元映画にした「よみがえる2万年前のある日」(毎時10分、30分、50分から10分間上映)も上映されており、映像を見ることでよりリアルに2万年前の姿を思い描くことができます。
▲復元映画の上映が終わると、突然”狩人”がやってきました! 毛皮を身につけた”狩人”を中心に不思議な声や踊りで、何かの儀式を行っているようです。踊りは近くで見ると大迫力! 地下展示室が神聖な雰囲気に包まれました。 儀式はいつ行われるか分からないので、立ち会えた方はとても幸運です。
特別企画展「センダイ 遺跡の記憶」は、9月23日(月・祝)までの開催です。仙台の遺跡から発掘された貴重な資料が一堂に会するこの機会を、ぜひお見逃し無く!
(事務局・帖地)
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【お問い合わせ】
地底の森ミュージアム
TEL: 022-246-9153