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せんだい3.11メモリアル交流館はじめましてレポート

風の音にぞおどろかれぬる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。SMMA事務局吉田です。
今回は久しぶりに、新しくSMMAに参加したミュージアムをご紹介する「はじめましてレポート」をお送りします!

 

今回ご紹介するミュージアムは、せんだい3.11メモリアル交流館。2015年12月の地下鉄東西線開通とともに1階部分が開館し、翌年2月に上階部分と併せて正式に開館したばかりの新しい施設です。2011年3月11日に発生した東日本大震災のメモリアル施設として、当時の記憶や経験を発信するだけでなく、震災による津波の被害を受けた仙台市東部沿岸地域の生活を伝えていくことを目的に活動しています。

 

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メモリアル交流館は仙台市営地下鉄東西線の最東端、荒井駅のなかにあります。居久根(いぐね)をイメージした駅舎のなかを進んでいくと、南2番口の近くにこのようなガラス張りの入口が見えてきます。まずは1階の交流スペースをのぞいてみましょう。

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交流スペースは仙台市東部沿岸の立体地図やスライド映像などを通して、荒井駅周辺の地域情報を見ることができるスペースです。関連図書や無料配布のマップなどの読み物も充実。バスや地下鉄の待ち時間に気軽に立ち寄ることができます。

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入口に設置されているこちらの大きな水槽では、宮城教育大学が震災発生前に採集していた若林区井土地域のメダカを飼育しています。これは津波の被害に遭った井土地域のメダカを繁殖させてふるさとに還すための取り組みで、メモリアル交流館も「里親」のひとりとして飼育に取り組んでいます。
実はメモリアル交流館は、メダカのふるさとである井土地域に最も近い公共施設にいる里親なのだとか。加えて震災後の圃場整備によってふるさとで生活できなくなってしまったメダカの現状は、ふるさとに帰れない東部沿岸地域の人々にも重なることから、交流館職員のみなさんは井土メダカに特別な思いを抱いているそうです。
ご来館の際には、ぜひメダカの様子もごらんください(ドジョウもいます)。

 

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さて交流スペース内の階段を昇ると2階の展示室に出ます。展示室は東日本大震災の被害や復旧・復興の状況等を伝える常設展示と、東部沿岸地域の暮らしや記憶を伝える企画展示の二つから構成されています。

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展示室に入って手前半分ほどのスペースが常設展示にあたりますが、ここでまず目をひくのは壁にびっしり並んだパネルと、壁からぽこぽこと生えているカラフルな板。震災前の様子から震災発生時の状況、復興に向けて活動している人々の写真や証言などを時系列順に並べつつ、「住まい」や「自然」といった様々なテーマの板で色分けしています。実はこれらのパネルはすべて取り外しが可能で、震災前の記憶や震災後の復興状況など、今後集まる情報も展示に加えていけるよう設計されているのだそうです。
また常設展の中央には一枚の木の板が展示されていますが、これは津波により被災した東六郷小学校の床材で、メモリアル交流館の展示室の床と机の天板にもこの床材が使われています。

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こちらは津波に遭う前の荒浜地区の様子を再現したジオラマ。無数に立っている透明な旗は、震災前にこの地域に暮らしていた人々から寄せられた生活の記憶です。
「中学の時、(ここで)花火をして怒られた」「ふりかえると仙台の街が見える景色が好き」……一度はなにもかもが津波に流されてしまいましたが、沿岸や街並みにまつわるなにげない思い出が、かつてそこにあった人々の暮らしを確かに感じさせます。職員の飯川さんによれば、いまでも地元の人がこのジオラマを見ては「自分の家があるなんて思わなかった」「ここで海水浴したんだよなあ」などと思い出を語っていかれるそうです。

荒浜地区は現在災害危険区域に指定されているため住むことはできないのですが、スケートパークCDPの開設をはじめ、地元の人々とその記憶を荒浜に繋いでいくための試みが少しずつ進められています。変わっていく街並みや暮らしのなかで作られていく思い出もまた、交流館を経由して誰かに伝わっていくのかもしれません。

 

東部沿岸地域の暮らしや記憶を伝える企画展示のスペースでは、「《せんだい3.11メモリアル交流館を囲む風土展 #01》夏の手ざわり 秋の音」が開催されています(2016年10月30日(日)まで)。

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常設展と企画展を区切る黒々とした木々のシルエットは、杜の都仙台の象徴とも言うべき居久根をイメージしたものです。

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木々の間から向こう側をのぞきつつ企画展に足を踏み入れると、まるで小さな集落が宙にいくつも浮かんでいるかのような空間が目の前に現れました。

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「夏の手ざわり 秋の音」は、震災の前から仙台東部で暮らしていた人々の記憶をもとに、これから失われてしまうかもしれないもの、これからも残していきたいものを考えるための企画展です。そのため展示空間は、水田の合間に緑の集落が点在しているように見えたという、かつての仙台東部地域の様子を反映させたものになっています。白い壁にひかれた青い線は水平線を表し、集落を模した展示台が水平線の高さに合わせて設置されています。
展示の見た目だけではありません。実は企画展のなかでは涼しげな虫の声が流れていました。展示が始まった7月頃は夏をイメージした水の音を流していたそうです。五感を通して当時の暮らしを感じるための工夫が施されたこだわりの展示空間は、ぜひ足を運んで体感していただきたいところです。

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それぞれの集落には数枚のボードが展示され、住民のみなさんが語ってくれた震災前の暮らしの思い出を立体のイラストとともに紹介しています。ここでも当時の暮らしを少しでも五感で感じてもらえるように、ボードはそれぞれ手に取ってじっくりと見られるようになっています。
また居久根のシルエットと向かい合う白い壁には、住民のみなさんの言葉から見つけたオノマトペが描かれ、人々の故郷への思い、失われたものへのやるせなさを臨場感とともに伝えてきます。

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そしてオノマトペに埋もれるようにしてぽつりぽつりと掲げられている、震災後の暮らしを語る人々の言葉。それはさながら、壁の向こうの内陸へ、地元から遠く離れた場所へ移らざるをえなかった人々の暮らしを象徴するかのようです。

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今回の企画展では、「食べられる生きものを探しにいくツアー」や「まめげっつぁん」など、仙台東部の暮らしを伝える関連イベントが数多く実施されました。それらは交流館の職員のみなさんが、地元のおじいちゃんおばあちゃんを始めとする住民のみなさんと協力して実施したものです。こうしたイベントを通じて知り合った住民の皆さんからも、当時の暮らしを伝える様々な話を聞くことができるといいます。震災という大きな出来事を注視するだけではなく、これまでのこと、これからのことに目を向けて地域の記憶を繋いでいく。そんな交流館のみなさんの想いが感じられる企画展でした。

 

このように、せんだい3.11メモリアル交流館では東日本大震災の記憶を県内外・国内外の人に発信していくだけでなく、震災前からその土地に息づいていた暮らしの記憶を繋ぎとめ、地元の人々と共有しながら伝えていく役割も担っています。こうした役割を果たすことは、震災とは何だったのか、震災が起こった地域にかつてあった暮らしとは何だったのか、という疑問を繰り返し問い続けることでもあります。

「でもそれはいま答えが出る問いではないし、震災も暮らしもこれからずっと続いていくものだと思うんです。当館はなにか明確な答えを提示できる施設ではありませんが、展示を観ていただいた方になんらかの問いを持ち帰ってもらえたら、と思っています」(交流館職員)

せんだい3.11メモリアル交流館は東西線荒井駅にて、みなさまをお待ちしています。

 

 

せんだい3.11メモリアル交流館
開館時間:10時〜17時
休館日: 毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)、祝日の翌日(土・日曜日、祝日を除く)、年末年始
入館料:無料
アクセス:地下鉄東西線荒井駅下車(荒井駅駅舎内)
TEL:022-390-9022

 

 

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