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SMMA取材レポート 仙台市歴史民俗資料館 ミュージアムスペシャル体験 「違いがわかるあなたへ-本格石うす挽きコーヒーづくり」

SMMA取材レポート
仙台市歴史民俗資料館 ミュージアムスペシャル体験
「違いがわかるあなたへ-本格石うす挽きコーヒーづくり」
9月14日
写真と文:佐藤泰(前せんだいメディアテーク副館長)

予定の3時に来館されたのは、近くにお住まいの栗田さんご夫婦。博物館はじめミュージアムはよく利用しているが、ピクニックを知ったのはたまたまメディアテークに来られたときだったそうだ。今回ピクニックに参加することで、縄文の森と科学館にはじめて行くことができたとのこと。「スタンプピクニックがなかったら、行くきっかけもなかったので、今回参加できてとても良かったです」と奥さま。「科学館から文学館まで森林公園を歩いたときの山道には驚いたけど、その後に通りがかった竹林でタケノコが出ているのをみつけましたよ」と、ご主人も楽しそうだった。

今回、栗田さんご夫婦が石うす体験を希望したのは、家が近いこととコーヒーが好きだからだとのことだ。まずはじめに畑井洋樹学芸員が石うすの説明をしてから、実際に豆を入れて挽き方を実演する。石うすは、世界的に時計と反対回りに回すのが主流であること、回しかたが早いほど粗挽きになり、ゆっくりなほど細かくなること、腕の筋肉ではなく上半身を使って回すこと、など石うすの基礎知識を教えてくれる。

さっそくご主人が回し始める。ご実家にはもうすこし小さい石うすがあって、きなこや米粉など、何かあるごとにおばあさんが回していたそうだ。小さい頃それを見ながら回していただけあって、回しかたは自然で実にスムーズ。とはいえおそらくコーヒーははじめてだろう。ほどなく挽き立ての良い香りが周囲にひろがっていった。

用意した豆は200グラム。3分の1ほど挽いたところで、ご主人の額に汗が浮かぶ。そこで奥様にバトンタッチ。はじめて回す石うすは重く、とりわけ女性の場合、腕の力だけで回すのは無理があることがわかる。取材していた私もお手伝いさせていただいたが、ごりごりと石うすを回しながら、おばあさんが石うすの前に丸くなって座り、覆い被さるようにしてゆっくりゆっくり回している姿が思い浮かんだ。

通りかかった人も飛び入りで巻き込みながら、コーヒー挽きは終了。石うすの中に残った豆を見ると、中心部から外周に向けてどんどん細かくなっているのがわかる。うっすらとコーヒーの粉をかぶった石うすは、まるでココアをまぶしたケーキのようだった。さっそく挽き立てを畑井学芸員がカリタで淹れる。細挽きの豆は薫り高く、本当に美味しかった。実は石うすコーヒーは、毎年のゴールデンウィークに行われる「おもしろ昔たいけん」の定番でもある。来年はその輪の中に、散歩がてらこられた栗田さんご夫婦の笑顔もあるかもしれない。挽き立ての豆はすべてお持ち帰りいただく予定だったが、栗田さんはなんと取材の私にも分けてくださった。コーヒーの香りと石うすが生み出した豊かな時間の中で、こんなふうにゆったりと人の繋がりがひろがっていく。栗田さんも、私も、歴史民俗資料館での思い出がまたひとつ増えたと思う。

 

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