SMMA SENDAI MIYAGI MUSEUM ALLIANCE 仙台・宮城ミュージアムアライアンス

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1700年の眠りから覚めたポンペイ

青葉が初夏の訪れを告げる定禅寺通りから、昼間はまだ眠そうな飲み屋街の国分町を抜け、広瀬川を背にして山道をのぼると、仙台市博物館が現れます。

博物館では、特別展「ポンペイ展~世界遺産 古代ローマ文明の奇跡~」が開催されています。東日本大震災の影響をうけ、一時休館からの再開にあたり会期を6月5日まで延長したそうです。

「ポンペイ」はイタリア南部、カンパニア地方に位置し西暦62年大きな地震に見舞われ、西暦79年には数百年の眠りから覚めたヴェスヴィオ山が大噴火し一昼夜のうちに火山灰の下に埋もれ、1700年の眠りにつきました。その後、18世紀半ばから本格的にはじまった調査により発掘された、日本初公開のものを含む壁画、彫刻、工芸品や日用品など約250点が博物館で公開されています。

広大な海の向こう、2000年という眩暈をおこしそうな時間、その地理的にも時間的にも「遠い」土地の営みとは? 大きな疑問符を抱えたまま展示室に入ると、彼方此方から確かに聞こえてくる息づかいに気づくのでした。

中でも印象深かったのは、居酒屋で葡萄やオリーブ、いちじくをほおばりながら、歌い、語り合う「民衆絵画」と呼ばれるもので、酔っ払いのいる情景は、人情味にあふれ、宴の笑い声がこだまして国分町の路地裏と、ポンペイの酒場が一瞬にしてつながるとても不思議な感覚を覚えるのでした。

また、博物館ではなかなか目にすることのない、町にかかれた落書きも展示されています。これは、当時人々にとってのヒーローであった剣闘士の落書きで、辻や家の壁に数多く残されているそうです。それらは、円形闘技場で行われていた剣闘士のショーに熱狂する人々の姿、あこがれの剣闘士の姿を壁に刻む子供たちの姿が確かにそこにあったことを伝えてくれます。

ほかにも公衆浴場だけでなく、一部の富裕層の住宅には個人用の浴槽も備えられていて、入浴による衛生管理に心を配り暮らしていたことや、その豊かな生活を支えるための水道、ボイラー施工に奴隷労働が行われていたことなどもわかってきます。

ポンペイの町を歩くように、展示室を廻り終えるころには、数千年の時を越え、そこに暮らしていた人々の息づかいとともに、現実は一つでなくそれぞれの現実で人々が生きていたことが見えてきて、最初とは種類の違う眩暈をおこしつつ、それこそがポンペイの町の在り様を伝え、人々の営みと、目の前にひろがる社会が、人々の魂の中の記憶として出会っている事実に気づくのでした。

近所を散歩するように、博物館を訪れてみてください。なだらかな坂道を登るとそこはポンペイの路地裏につながっています。

 

SMMA仙台・宮城ミュージアムアライアンス実行委員会事務局 清水チナツ

 

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