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梅と桜と

もう3月だというのに、まだ仙台は寒いですね。今年の春は、仙台人にとってだけでなく、きっと誰にとっても特別な春でしょう。東日本大震災から1年が経とうとしていますから。

さて、仙台での梅の見頃は、例年ですと3月下旬頃からとか。しかし今年は特別寒いので、遅くなりそうです。そこで仙台市博物館の出番です。この時期に本物より先に楽しめる「梅」と言えば…もうお分かりですよね。国宝「紅白梅図屏風」です!これは、MOA美術館から震災復興支援のお申し出により企画されたものです。先日、熱海のMOA美術館の名品展にて、一足先に拝見させていただきました。本当に、匂い立つような名画です。拝見した当日の熱海はとても暖かくて、美術館の庭には紅梅がすでに満開。高貴な香りを放っておりました。数日後には当館にあの名画がやってきます。他にも伊達政宗所用の茶碗や浄瑠璃物語などの名品9件も一緒に展示されますので、どうぞお楽しみに。

fig.1 三沢初子所用の帯(重要文化財)仙台市博物館蔵

fig.1 三沢初子所用の帯(重要文化財)仙台市博物館蔵

さて当館所蔵品の梅自慢もさせてください。三沢初子所用の帯(重要文化財)です(fig.1)。三沢初子とは、仙台藩4代藩主・伊達綱村の生母です。初子の帯は12筋も残っているのですが、その中に梅の模様の帯が3種類含まれています。どれも江戸時代前期の技法と共に、当時のままの細い帯の形をしており、とても貴重なものです。初子の帯は4月20日からの企画展「仙台藩の御家騒動」で展示します。どの帯が出るかはお楽しみに。

それから、梅をモチーフとした工芸品には、「竹菱梅葵紋蒔絵女乗物(たけびしうめあおいもんまきえおんなのりもの)」があります(fig.2)。これは、十代藩主・伊達斉宗にお輿入れした紀州の姫・鍇姫(かたひめ:金かねへんに皆)の所用とされています。葵紋のついた乗物で、全体に竹を菱形に交差させた文様に、竹の葉と、そして梅の花と蕾を散らしています。鍇姫の肖像画も当館に残っていますが、この絵でもやはり梅の花の着物を着ています。おそらく鍇姫にとって、梅は大切な文様だったと思われます。

ffig.2 竹菱梅葵紋蒔絵女乗物 仙台市博物館蔵

fig.2 竹菱梅葵紋蒔絵女乗物 仙台市博物館蔵

もうひとつの花。仙台の季節感としてはまだまだ早いですが、桜についても少し触れておきましょう。

日本人は桜が大好きな民族だと言われます。確かに、多くの人々が桜を愛し、さまざまな芸術に桜を取り入れてきました。

当館所蔵品でまず桜と言えば、豊臣秀吉が開催した「吉野の花見」に関する資料、「吉野懐紙(よしのかいし)」が挙げられます。これは、太閤秀吉が文禄3年(1594)吉野山で行った花見にて、伊達政宗や徳川家康などの武将たちや、公家などが和歌を懐紙にしたため、それを3巻の巻物に仕立てたものです。ちなみに伊達政宗と徳川家康は直筆です。特に当時28歳の伊達政宗の書は、他の参加者と比べても遜色ない達筆であったことがわかります。

fig.3 雪薄竹に雀紋桜枝散蒔絵書棚 仙台市博物館蔵

fig.3 雪薄竹に雀紋桜枝散蒔絵書棚 仙台市博物館蔵

もうひとつ、桜の資料を紹介しておきましょう。「雪薄竹に雀紋桜枝散蒔絵書棚」(fig.3)です。江戸時代中期(18世紀)の婚礼調度のひとつです。婚礼調度のうち棚類は、「厨子棚(ずしだな)、「黒棚(くろだな)」、「書棚」をひとくくりとし、「三棚(さんたな)」と呼ばれます。そして、この書棚と同じモチーフでよく似た黒棚がイタリアのベネチア東洋美術館にあり、さらに厨子棚は九州の佐賀県の鍋島報会效会に伝存していることが判っています。

ところで、当館の周囲は知る人ぞ知る桜のプチ名所です(fig.4)。長沼の満開の桜の下を散策するも良し、館庭の芝生でお弁当を広げるのも良し。いずれにせよこれからも、静かに楽しく桜を楽しめる場所であってほしいと思います。

fig.4 長沼の桜

fig.4 長沼の桜

最後に。桜を見ると、必ず思い出す和歌があります。
「ねかはくは 花のしたにて 春しなん そのきさらきの もちつきのころ」西行
華やかで壮絶な和歌ですが、満開の桜を見上げると、何故か納得してしまいます。
あなたは桜に何を思いますか?

仙台市博物館 学芸員/主査 高橋あけみ

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