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いちおしミュージアムめぐり 〜交通編〜

♪きてーきいっせいしんばしをー はやわがきしゃはーはなれたりー♪(「鉄道唱歌」)

……この先が歌えないSMMA事務局吉田です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて2015年12月6日の地下鉄東西線開通では、仙台市内を移動する新たな路線の誕生に市全体が沸き上がりました。そんな仙台市で現在、仙台の交通に関する展覧会が行われていることはご存知でしょうか? それも1ヶ所ではありません。SMMA参加館のうち3つのミュージアムで、仙台の交通に関する展示が開催されています。
そこで今回は仙台の「交通」をテーマに、3つのミュージアムの展示とそのみどころをご紹介します。最後に各館へのアクセスも掲載していますので、ミュージアムめぐりの参考にしていただければ幸いです。

 

その1 東北福祉大学・鉄道交流ステーション
その2 仙台市博物館
その3 仙台市歴史民俗資料館
おわりに ミュージアムを巡ろう!

 

 

その1 東北福祉大学・鉄道交流ステーション

第26回企画展 東北の鉄道愛好家シリーズⅢ「瀬古龍雄と仙臺の鉄道 昭和25年〜28年を中心に」

新潟市を中心に活躍した鉄道研究家・故瀬古龍雄氏が、東北大学在学中の昭和25〜28年に仙台周辺で撮影した写真を展示しています。

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昭和25〜28年の仙台は、戦後の復興が進み様々な交通機関が過渡期にありました。例えば仙台市電は苦竹に米軍キャンプが置かれた影響や昭和27年の三県国体開催に対応すべく、市の東方に向かって路線の拡大や複線化が進められていました。もともと松島への観光線や都市郊外電車として運行していた仙石線(旧宮城電気鉄道)は、戦時中は軍用路線、戦後は苦竹駐屯地へのアクセスとして盛んに利用されていました。また当時は仙台鉄道や仙北鉄道といった小さな私鉄の姿が見られ、栗原鉄道では蒸気から電気へと動力の転換が……などなど、仙台周辺のあちこちで交通網の発展や転換が進められていた時期だったのです。
(写真は三県国体の会場と仙台の交通網、旅館の場所などを記した地図。取材当日の展示に追加されていました!)

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当時学生だった瀬古氏がこうした時期に撮影した仙台の鉄道や市電の写真は、旧いものと新しいものの入り交じるこの時期だけの車両の姿を主役としながら、当時の交通とともに生きる街の様子をも鮮やかに伝えます。
今回展示されている写真のほとんどはフィルムから四つ切りサイズに紙焼きをしたもの。展示ケースに並べられたアルバムには、写真が貴重だった時代らしく小さなコンタクトプリントが几帳面に整理されています。瀬古氏の鉄道写真を鉄道雑誌などで見たことのある方にとっても、このように紙焼きで一枚一枚じっくりと見られる機会は珍しいのだとか。

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新しい部品を付けて颯爽と運行しているのに、旧い部品が付けっぱなしになっている市電。パンタクラフ(電車の屋根についている集電装置)をいっぱいに伸ばして、高い位置にある鉄道用の電線と無理矢理繋がっている電車。時代に翻弄され、どこかちぐはぐな姿で走る車両は実にユニークで、嬉々として町を巡りカメラを構える鉄道青年の様子が目に浮かぶようです。

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そんな瀬古氏の写真の真骨頂は、車両形式写真。車両の構造や形態などの特長をとらえるための車両形式写真には、鉄道の部品ひとつひとつが細部まで鮮明に写し出されています。
今回の展示では、瀬古氏が大好きだったというC51型蒸気機関車を取り上げた小さなコーナーが置かれています。それぞれの車両の細かな違いを的確にとらえた瀬古氏の技、ぜひ会場でごらんください。

 

 

その2 仙台市博物館

「仙台市史」完結・仙台市地下鉄東西線開業記念 企画展「せんだい再発見!―こんなことわかりました。平成の『仙台市史』」

平成2年から始まり平成26年度までに全32巻を刊行し完結した『仙台市史』。市史編さんの過程で調査・収集してきた資料のなかから代表的・特徴的なものを選び出し、地下鉄東西線の開業で新たな時代を迎える仙台という地域のなりたちを「再発見」してもらおうと企画された展覧会です。

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展示室内には旧石器時代から近現代に至るまで、仙台のあらゆる時代を綴るにあたって重要な情報をもたらした資料が並び、そのジャンルも古文書から絵画、磁器、地層のレプリカなどと多岐にわたっています。
まるでひとつの歴史絵巻のような展示室を進んでいくと、国宝や重要文化財などを展示している展覧会とはまた違う感動があります。特に編さん作業の際に収集された拓本の山や、大量の伊達政宗文書から集められた政宗の花押の束などは、仙台のあちこちに残された歴史の痕跡、それを収集してきた人々の年月にしばし釘付けとなりました。

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仙台の交通については、鉄道敷設前夜の検討や開発に関する資料が展示されています。
例えば宮城電気鉄道(後の仙石線)を運営していた宮城電気鉄道会社の免許申請書や、仙山線の線路をひくルートを検討していた時の「仙台市会会議録」などは、仙台に新しい交通が生まれる際の様子を今に伝えてくれた大事な資料です。こうした記録を残していった人たちや、鉄道に関わった人たちを通して、仙台における鉄道の歴史が現在まで繋がっていったのではないでしょうか。

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また1階ギャラリーにて開催中の関連展示「市史編さん事業展 あれコレ?せんだい」では、「せんだい電車ものがたり」と題した写真パネル展も行っています。日本初の「地下鉄」とされる宮城電気鉄道をはじめ、仙台市電や地下鉄南北線・東西線のなりたちなどが紹介されています。

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ちなみに仙台市博物館2階のレストラン「三の丸」では、企画展にちなんだ期間限定メニュー「仙臺藩小正月御膳」を企画展の期間中のみ提供しています。
仙台藩士の家に残された記録から再現したひき菜の雑煮から、戦後名物となった牛タンまで、仙台の郷土料理がもりだくさんのメニューです。一日10食限定ですのでお早めに。

 

 

その3 仙台市歴史民俗資料館

特別展「仙台のまちと近代交通」

人力車から仙台市地下鉄東西線に至るまでの仙台の交通の変遷や、それに伴う人々の生活の移り変わりを紹介しています。

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特別展のみどころのひとつは、完全な姿で展示されている人力車。ここまで姿を保ったまま残っていることは珍しいそうです。よく見るとこの時代の人力車の車輪は、木の枠に鉄をはめた構造をしています。舗装もされていない道を硬い車輪で走るとなれば、乗り心地は相当悪かったのでは……(ちなみにこの人力車は、お医者さんが患者の家々を回る際に乗っていたものと考えられています)。

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廊下にずらりと並んでいるのは、仙台駅の歴史を伝える写真や地図の数々。ある時は空襲で消失し、ある時は新幹線開通に対応すべく取り壊され、姿を変えながら仙台の人々とともにあった仙台駅の変遷を伝える資料は必見です。
終戦後の仙台駅の仮駅舎の写真を見ると、人力車が駅前に待機列を作っています。燃料を必要としない交通手段だからこそ、終戦後の貧しい時代にも活動できたのでしょう。この頃の人力車の足元は、さきほどご紹介した木枠の車輪からゴムチューブのタイヤに変わっています。

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さらに展示室内にはこんなに太いタイヤを履いた自転車も! 右の写真の自転車と比べるとどれだけ太いかが分かりますね。
実はこの太いタイヤの自転車は、あるものを配達する時に使っていたのですが……正解はぜひ特別展で確認してください。ちなみに右の写真は牛乳屋さんの配達用自転車です。

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そして特別展のもうひとつのみどころは、当時の人々と交通の関係がよく分かる資料が展示されていること。当時の交通案内や仙台市電の乗車券、バスでの一泊旅行をPRするポスターなど、人々の移動手段や観光の変化を伝える資料が数多く見られます。交通の変化によって、町の様子だけでなく人々の娯楽までもが変わっていったことが分かるこの特別展、これから私たちの生活がどう変わっていくのか考えながら観るのも楽しそうですね。

 

 

おわりに ミュージアムを巡ろう!

というわけで、今回は仙台の「交通」をテーマに3つのミュージアムの展示をご紹介しました。3つの展示を巡ることで、いまはなき鉄道や市電の在りし日の姿、仙台に鉄道が敷かれるまでの記録、市電や鉄道のある暮らしなど、いろんな角度から仙台の交通に親しむことができると思います。

最後に、各館へのアクセスをご紹介します。今日ご紹介した3つの展示、実は市内の公共交通機関を使えば1日で巡ることができるのです。
今度の休日は1日じっくり、仙台の交通とミュージアムにひたってみてはいかがでしょう。

◎アクセス
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◎各展示の開催期間
・第26回企画展 東北の鉄道愛好家シリーズⅢ「瀬古龍雄と仙臺の鉄道 昭和25年〜28年を中心に」(東北福祉大学・鉄道交流ステーション):
平成27年12月1日(火)~平成28年3月5日(土)
・「仙台市史」完結・仙台市地下鉄東西線開業記念企画展「せんだい再発見!―こんなことわかりました。平成の『仙台市史』」(仙台市博物館):
平成27年12月5日(土)~平成28年2月28日(日) ※1月19日(火)より後期展示開始
・特別展「仙台のまちと近代交通」(仙台市歴史民俗資料館):
平成27年11月14日(土)~平成28年4月17日(日)

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