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2010/03/17
SMMA最終講義 -インターンシップレポート-
今回のSMMA「最終講義」は仙台の有名なミュージアムの学芸員の方々による研修会ということであったが、これからのミュージアムの方向性を考えさせるとても重要な講義だった。この講義に参加できたことは、自分の見解を広げるという貴重な体験をさせてもらった。
心に残っている話は、人と人の繋がりが自分を育てる、豊かにするというものだ。この話はミュージアムにも繋がる重要な考え方だと学んだ。それは、人と人の繋がりから生まれる新しいミュージアムのあり方である。博物館や美術館、科学館には、学術的な知識が必要という硬いイメージが一般的に持たれている。またそういったイメージから、敷居が高いという印象を受ける。人間は自分が知らない事、物に対して興味を抱くか、怖じるかのどちらかの反応を示す。つまり、人々はミュージアムに存在する全く知らない知識や情報に対しある種の軽い畏怖を抱いているのだろう。そのため人々はミュージアムに対し身構えてしまい、硬い印象を持つのではないだろうか。各館ではそういった「敷居」を失くすために様々な取り組みがなされている。総合学術博物館では、資料標本に囲まれた館内でのミュージアムトークの開催を積極的に行い、館に実際に足を運んでもらうことにより、その来館者が感じる敷居を失くしていく試みがなされているとのことだった。
また芹沢銈介美術工芸館では、女性客の来館が多い。そのためミュージアムショップやレストランの充実などソフトな面から敷居を失くそうと試みているとのことがわかった。小井川百合子先生からは、学芸員としての立場からのお話が挙がった。館を運営していくにあたり、一番大切なことは市民を思う心であり、学芸員には来館者とのコミュニケーションを行い、館に対する敷居を失くすという役割がある。しかしそういった役割の他に学芸員には、学芸員としての研究を行っていかなくてはならない。この二つを両立していくことは中々に難しいことではあるが、どちらかを捨てるのではなく、両者の加減を見極め調節しながら両立していくことが大切だということであった。
濱田淑子先生のお話では、これからの博物館は市民の立場を考えてそれぞれの博物館が持つ個性を生かしながら連携していくことが大切だということが印象的であった。大竹牧夫先生は「学芸員は野次馬でなければならない」とおっしゃっていて、何事にも好奇心を持つことが大切だと感じた。また、積極的に行動した結果、失敗してしまったことには次の仕事に生かしていき、消極的な行動で起きてしまった失敗は指摘してもらい反省することが大切だというお話は自分自身、肝に銘じなければならないことだと感じた。好奇心を持つことで自分の中の引出しが増える、そのことが運の良さに繋がっていくという小井川百合子先生の言葉は、これからの生活で生かしていきたいと思う事柄であった。運の良さも学芸員に必要な資質であるということには驚いた。その他に心身の健康や少しのずうずうしさが学芸員の必須要素であることを教えていただいたのは、とても参考になった。
公共施設としての博博連携や博学連携のしくみを学芸員過程の授業で教わったが、仙台で実際に行なわれている事例を知ることができ、文化施設の役割についてより知識を深めることができた。結城慎一先生からは、公共施設としての博物館には市民参加が大きなポイントである。そして開かれた博物館にすることによって学芸員も新たな視点を持つことができ、市民の自立にも繋がるという公共施設の社会的役割を具体的に教えていただいた。加えて、高取知男先生がお話していた仙台市科学館の先進的な博学連携の内容は興味深いものであった。永広昌之先生の研究からは、学芸員として第一線で活躍するには専門的研究が不可欠だと実感した。このインターンシップにおいて自分で立てた目的を、常に念頭において残りの期間を過ごしていき、社会人としての意識を学校生活に戻っても向上していけるようにしたい。
東北学院大学 白石成花
宮城学院女子大学 安藤彩香