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2012/02/10
フラワー☆スターロード
青葉区錦ケ丘、秋保方面へと向かうフラワー☆スターロードを通っていくと、そこに仙台市天文台があります。今の季節、この星降る丘は雪降る丘となり、天文台の白い建物も大きなかまくらのようです。しかし春になると、フラワー☆スターロードはその名の通り、様々な花に彩られ、星へと誘う道になります。(fig.1)天文台の入口にはヤマボウシ、サルスベリなど、季節を通して花が出迎え、芝生が茂る惑星広場でも桜やラベンダーなどの花が咲き、天の川の星を花に見立てて作られた「花と緑の天の川」も見ることが出来ます。
しかし、花が咲いているのは地上だけではないようです。
空を見上げてみると、星空にも様々な花が咲いています。
まずは、今見ごろを迎えているおうし座に咲く「あじさい」。ブルーの小さな花たちがひっそりと肩を寄せ合うように集まって咲いています。星の世界では「すばる」と呼ばれていて、人の目では6-7個ほどしか見えませんが、実際は130個ほどの星が集まった星団です。人間で言うと幼稚園のこどもたちと同じくらいの年齢になるこの星たちは、これから満開になっていくことでしょう。(fig.2)
続いて、おうし座の隣、オリオン座にある薄紫色の「パンジー」。ふわっと宇宙にゆらめくこの花の中には生まれたばかりの星たちがいて、花びらに包まれて育っているところです。これは「オリオン星雲」といって、肉眼でも見ることが出来ます。望遠鏡を使うと、ガスが雲のようにふんわりしている様子がわかるだけでなく、生まれたばかりの星たちも見ることが出来ます。(fig.3)
さらに、隣に目を移してみると花びらがこぼれんばかりの「バラ」が咲いています。これは「ばら星雲」と呼ばれていて、生まれたばかりの若い星の周りのガスが星に照らされて光っているところです。周りのガスのほとんどは水素でできていて、これが照らされると赤っぽく輝くので、まさに真っ赤なバラのように見えます。しかし、残念ながら肉眼で見ることはできません。望遠鏡を使っても中心部の星がいくつか見えるだけで、バラの姿を確認しようとすると、望遠鏡を通してカメラで撮影しないと花びらの形はわからないのです。ばら星雲が輝く星座は、あまり目立った星がないいっかくじゅう座。ばら星雲という華やかな名前ですが、星空の中ではひっそりと誰かを想うように咲いています。(fig.4)
季節が変わって初夏が訪れると、今度は大輪の「ひまわり」が見えてきます。ひまわり銀河とも呼ばれる「M63」という天体です。その正体は数千億の星の集まりで、種の部分にはぎっしりと星が詰まっています。この辺りは周りに銀河が多く見られるので、見渡せばひまわり畑。お弁当を食べるにはもってこいの場所になりそうですね。
あじさいにパンジー、バラにひまわりと、どうやら星空の中にもフラワー☆スターロードがあるようです。
仙台市天文台学芸員/企画・交流担当 溝口小扶里